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はやぶさ 世界初の旅終え帰還…カプセル着地を確認(毎日新聞)

 【グレンダンボ近郊(オーストラリア南部)永山悦子】小惑星イトカワの岩石採取に挑んだ探査機「はやぶさ」は13日深夜、地球に帰還した。月より遠い天体に着陸し、地球に戻ってくるのは史上初。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、はやぶさは午後10時50分ごろ(日本時間)、大気圏に突入、はやぶさ本体は燃え尽きた。JAXAは、ヘリコプターによる捜索隊が目視でカプセルをオーストラリアのウーメラ砂漠で発見したことを明らかにした。14日朝、回収作業を始める。中にイトカワの砂などが入っていれば、世界で初めて小惑星で直接採取した物質となる。03年5月の打ち上げから7年。予定より3年長引いた旅の総距離は、月への往復約8000回に相当する約60億キロに達した。

 ◇7年、60億キロの旅

 「もうだめだと思ったことは2度ある」

 はやぶさプロジェクトを率いる川口淳一郎JAXA教授(54)は今年5月、毎日新聞のインタビューで打ち明けた。一つは05年12月、イトカワに着陸直後、燃料が漏れて機体の姿勢が崩れ、通信が途絶し行方不明になったこと。もう一つは昨年11月のイオンエンジン(主エンジン)故障だ。いずれも深刻なトラブルで、誰もが地球帰還は絶望的と思った。

 「世界初」の技術をいくつも盛り込んだはやぶさは、数々のトラブルに見舞われた。

 主エンジン開発に携わった国中均JAXA教授(50)は「打ち上げの時はヒヤヒヤして心がつぶれそうだった。(往復できる)自信は10%もなかった。故障が重なり、主エンジンの寿命を考えると、不安だった」と話す。

 野心的な挑戦の構想は四半世紀前に生まれていた。1985年8月、文部省宇宙科学研究所(当時)で開かれた「小惑星サンプルリターン小研究会」。主催した鶴田浩一郎・同研究所教授(72)=現名誉教授=は「科学に新しい視野をもたらす」「広範囲の科学者、技術者が情熱を持てる」などを挙げ、「将来へ大きな夢をたくす計画」と、報告書に意義をつづっている。

 だが、実現は容易ではなかった。プロジェクトが正式に認められたのはそれから約10年後。「難しいミッションで、リスクが大きすぎるとさんざんたたかれた」。川口さんと計画を練り上げた上杉邦憲JAXA名誉教授(67)は振り返る。

 当時、日本は惑星探査では初心者で、「米国もやらないような挑戦、できるわけがない」と陰口が聞こえる中での船出だった。「ぶざまに負けるわけにはいかなかった」(国中さん)。技術者たちはその意地を貫いた。トラブルには知恵を絞って解決策をひねり出し、はやぶさは何度も危機を切り抜けた。いつしか「不死鳥」と呼ばれるようになった。

 世界の宇宙探査に詳しい米惑星協会のルイス・フリードマン事務局長は「非常に大胆な挑戦だった。小惑星の試料が入手できるか否かにかかわらず、とんでもない成果だ。多くのトラブルはあったが、賢明な技術者が挑戦を可能にした」と称賛する。「だが」と、川口さんは言う。「我々も努力したが、ここまでこられたのは、はやぶさ自身が助けてくれたから。それくらい幸運だった」

 満身創痍(そうい)のはやぶさは、地球からの指令にけなげに応え、小惑星への往復という大仕事をなしとげた。小惑星のかけらと引き換えに、自らは燃え尽きた。

 川口さんは14日未明、相模原市で開いた会見で語った。「成功は、今まで諸先輩方が築き上げてきた科学技術のたまもの。お祝いの言葉は諸先輩方に向けられるべきだと思う。最後まで献身的に貢献してくれたチームのみんなにも感謝したい」と話した。

 7年にわたる長い旅の終盤、はやぶさのエンジンの調子は尻上がりに良くなった。「太陽の周りをもう1周したくなった」と国中さん。はやぶさと技術者たちとの二人三脚はゴールを迎えた。はやぶさ最期の日は、日本の惑星探査が世界に肩を並べる日となった。

はやぶさ

 地球以外の天体から岩石などを持ち帰る探査に必要な技術の実証を目指した探査機。▽新型のイオンエンジン▽カメラ画像などを使った自律的な航行とイトカワへの接近・着陸▽小惑星での岩石採取▽試料を収めたカプセル回収−−などの新技術に挑戦した。上空から狙いを定めて着地し、すばやく飛び立つ様子が、岩石採取の手法に似ていることから、この愛称がつけられた。

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